2025.05.23腰痛と下肢痛
腰痛と下肢痛の原因は数多く(下図)ありますが、これを見ているといろいろな怖い病気がありますね。しかし日常的によく見る病気は、筋肉の疲労痛やケン引きの痛みなど筋膜性腰痛、椎間板ヘルニア、椎間関節性腰痛などです。下図で器質的要因というのは、骨や椎間板、靱帯などに明らかな病変が起こり、元の健康な状態とは違うことを意味します。
まず腰痛と下肢痛の違いを説明します。
腰痛は文字通り腰の痛みで、おしりも含めることが多いです。下肢痛は太もも(膝)から先(ふくらはぎにかけて)の痛みです。下肢痛があるときは、腰での神経の圧迫が原因の場合が多いので、MRIなどで神経の圧迫部位を探すと、痛みの原因部位がわかることが多いです。一方、腰痛だけの場合は、痛みの原因は神経の圧迫もありますが、それ以外に筋肉、靱帯、椎間板、椎間関節、椎体(骨)など多様です。さらに職場や家庭でのストレスなどの心理・精神的原因で腰痛が起こることもあります。ですので、腰痛の原因を調べるには、MRIやCTだけではなく、神経学的所見や詳細な病歴・診察と組み合わせての診断が必要です。そこが腰痛診断の難しいところであり、同時に脊椎・脊髄専門医が活躍できるところでもあります。
治療も同じです。下肢痛の場合は神経根ブロックという注射で痛みの場所を確認することもできますし、それが治療法の一部にもなります。またロキソニンなどの一般的な痛み止めや、神経障害性疼痛に効く薬(リリカ、タリージェなど)も効果があります。それでも治りにくい時は、ヘルニアならヘルニコアというヘルニアを溶かす薬もありますし、最終的には手術になっても痛みが取れやすいです。腰痛は大きく分けると①椎間板由来の痛み、②筋肉からの痛み、③椎間関節からの痛み、④それ以外の痛みに分けることができます。いずれの痛みも、動きが加わることで痛みが強くなりますが、それ以外の痛みの場合は、じっとしていても痛みが出ることがあるので注意が必要です。またほとんどの場合は痛み止めで効果がありますが、効果がない場合もありますので、その時は精査が必要になります。いろいろな痛み止めや、ブロック注射、生活上の注意などを守ってもらう事で痛みをとることを目指します。多くの腰痛、特に慢性腰痛に効果があるのが、運動療法(体操)です。人それぞれで痛みの原因が違いますので、当院ではその人に合った運動療法を行っております。特にご高齢の方の場合は、一般的な運動療法は負担が強すぎて、「できない」とあきらめてしまう人が多いです。そのような人には、その方に合った運動治療を指導しております。なかなか腰の痛みが取れなくてお困りの場合は、ぜひ受診をしてみてください。