2025.09.25首下がりプログラム
恕和会松田病院 整形外科 井口哲弘
【 1.首下がり症とは?】
いま街中を歩いていても首が垂れている人を見かけることが多くなりました。首下がり症の原因はパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、甲状腺機能低下症などの病気で発症することもありますが、約70%は原因が不明な特発性です。高齢になって(特に70歳以上)首の後ろに痛みを覚えてから数日から数週間で首が垂れてきて、3か月くらいで受診される人が多いです。神経筋疾患が原因の場合は気が付かずに進行していることもあるので、初めに神経内科を受診して見てもらうこともあります。
【 2.どんな訓練プログラムですか?】
当院のプログラムは私が済生会兵庫県病院にいるときに、整形外科やリハビリテーションのスタッフと一緒に開発したものです。まず首の後ろの筋肉が弱っているので、そのトレーニングから開始します。このトレーニングには普通の筋トレだけでなく、首や肩の筋肉の拘縮を取り可動域を回復させるリラクゼーションやストレッチがあります。また頚部をはじめ上体の保持には体幹筋力が大事な働きをしているので、いろいろな方法でこれらの筋トレやストレッチも行います。指導しながらの訓練になりますので、約1か月間の入院プログラムになります。落ち着けば、自主トレーニングプログラムもやって頂きます。このプログラムの特徴は評価法がきめ細かく、どれだけ改善されたかを数値でお示しすることができます。よく「外来ではできないのか」と質問されることがありますが、毎日朝と夕1日2回、十分な時間をかけてリハビリを行うには入院が必要となります。
【 3.回復しやすい人、しにくい人は? 】
入院時にいろいろな検査を行います。特に済生会兵庫県病院では頚部の造影MRI検査により詳細な原因調査が可能です。首下がりが出てきて期間が短い人、痛みが少ない人、検査での異常が少ない人は良くなる方が多いです。ちなみに済生会兵庫県病院のデータでは、治療前に前を向くことができなかった人が、治療後には全員、前を向いて歩行することが可能となりました。反対に発症後の期間が長い人、痛みが強い人、歩けない人は回復が難しいです。しかし数は少ないですが、松田病院では歩けなくて車いすで受診された方も、1か月以上集中的にリハビリをすることで、前方視ができるようになった方を経験しております。また手術後の方は人によりますが、回復が難しいこともあります。
【 4.プログラムが終わったら? 】
退院前に、ご自宅でできるプログラムを指導いたします。ときどき外来でチェックをさせて頂きます。一度良くなっても、3か月から半年で再悪化する傾向がありますので、自己トレーニングと定期的なチェックを行いながらフォローさせて頂きます。
【 5.ご相談先 】
松田病院 地域連携室 078-595-7699(直通)
ご不明な点や話が聞いてみたいという方がおられましたら当院地域連携室までご連絡をお願い致します
責任担当医
恕和会松田病院 整形外科 井口哲弘
済生会兵庫県病院 整形外科 戸祭正喜